Japan tour 2002 ライブリポート・横浜・ドルフィー 4/1/2002

ライブリポート by mid-west さん

 

 セカンドステージまでの間、健吾さんは客席を次々に回ってゆく。優しい心根がそうさせるのであろう。僕は思わず健吾さんと握手。本来ならハグするところ・・・。「よかった!感動しました!」と僕。健吾さんは「このメンバー、ほんまにええやつばっかりなんですよ。心がきれいで・・・。練習どんなにしても、ずっとついてきてくれる。音楽がほんまに好きなんですよね。ニューヨークなんて、練習にこんやついますからね。スタジオに行ったら僕一人で、練習もなにも、一人でなにしとんねん・・・とか思ったりして。時間が来て50ドル払って帰ってきたことありましたよ」。成田まで健吾さんを迎えに行ったメンバーたち。めちゃくちゃいいはなしである。彼らのつくりだす音楽が美しくないはずがない。

 セカンドステージに先立ってゲストの紹介。CMでおなじみの中村士郎さんをはじめとする日産のデザインチームの方々で、彼らは新型プリメーラや大ヒット中の新型マーチをデザインした。こちらの中村さんもベーシストであるそうだ。

セカンドステージは午後10時かっきりにはじまった。

08 Say Hello to Say Goodbye
 セカンドアルバムのタイトルになった曲。「この曲はおとなしい曲です。人は傷ついたり挫折したりしながら、しかしそれを乗り越えることで強くなれる・・・そういうメッセージを込めました」。アルトサックス抜きのトリオで、メロディアスでセンチメンタルに演奏される。本来ギターの使われる曲だが、ピアノがピュアな音で旋律を奏でた。

09 Fables of Faubus
 アルトサックスが入って、再びカルテット。ファーストアルバムから、チャールズ・ミンガスの曲「フォーバス知事の寓話」である。やはりこの曲もブルージー。リズムの変調がめちゃくちゃ楽しくて、気持ちよくスイングできる。セカンドステージの前半は、"Say Hello to Say Goodbye" の収録曲と"Divine"の収録曲を交互に演奏するする構成だが、次々に演奏される曲が、前曲を対象化し注釈をつけるかたちになっていて、中村健吾ワールドの奥深さをかいまみせてくれる。実に見事な構成である。

10 Field of Dreams
 センチメンタルなボッサノーヴァのバラード。子ども時代の記憶が健吾さんに書かせた曲だそうだ。ランドセルを背負って小学生が学校に通 うイメージ。そしてこの子たちもいつかせつない恋をする・・・。ロマンチストの面 目躍如である。ファーストノートから、サーッと視界がひらけるように拡がってゆく夢の広場。

11 Cat Walk
 再びファーストアルバムから。野本さんが、顔をあげて楽しそうに演奏しているのがとても印象的である。強烈なグルーブ感のうちに対話するピアノ・ベース・ドラムス、切り込み隊長は常にアルトサックスの役割である。旋律を歌いながら、踊るように演奏する健吾さんは、ベーシストのグレン・グールドである。

12 Hope
 「今回のツアー、この横浜の前は、広島で二日間のライブだったんです。広島は今なお平和を発信する場所で、その広島の二十何階という『one of the 高いビルディング』(笑)の会場でこの曲を演奏していると、様々な感慨にとらわれました。今世界中で戦争が行われていますが、僕らが音楽で平和のメッセージを発することで、いつかその言葉が届いて、世界中が平和になってほしい。音楽はそれを実現することができる道具だと信じています」。健吾さんのベースのソロから静かに始まり、ソプラノサックスに持ち替えた池田さんが旋律を奏でる。あくまでもメロディアスに、ロマンチックに・・・。この祈りが世界中に届きますように。

13 Where Crisis Speaks
 健吾さんが、再び上着を脱いで、今度はピアノの上に掛けた。高橋さんの強烈なドラムのソロからはじまる最終曲。アルトサックスの演奏に挑発されて、全員が一直線に頂上までかけあがろうとする。ギターのパートは、例によってサックスが担当。池田さんもフルスロットルである。サックス・ピアノ・ドラムスとソロパートがまわって、会場全体が高揚した雰囲気に満たされた中、フニッシュの時を迎えた。健吾さんは、汗だくである。

クロージング・テーマにのって、メンバーが紹介され、大きな拍手の中、この日のライブは終了した。気づくと、午後11時10分だった。

 楽曲へのコメントにも書いたが、健吾さんはファーストアルバムでブルージーな世界を、そしてセカンドアルバムでロマンチックな世界を僕たちに提示してくれた。今回のライブで、ふたつのアルバムの曲を交互に聴くことによって、僕たちは中村健吾の音楽語法のひきだしの多さと一年間の音楽性の深化とを実感することとなった。まさに、交響する健吾ワールドが出現したのである。そして、彼のそうした音楽探求への強いモチベーションを支えているのが、徹底的にファンキーな音楽観なのだ。ベーシストがリーダーアルバムを制作する以上、第一作でベースのブルージーな魅力を完全に引き出してみせるのは当然で、"Divine"は見事にそれを成功させた。一年後の第二作でも、第一作での成功の方程式を踏襲したいという思いは、健吾さんの中にもあったのではないか。
しかし、彼はそうしたイージーな道を拒否したのである。"Say Hello to Say Goodbye"では、僕たち聴き手が驚くほどロマンチックに変貌をとげ、新境地を開いて見せてくれた。一見ベースが後退しているかのように見えて、実はそのエレガントでチャーミングな魅力を最大限に引き出し得ているのは、中村健吾自身がコンポーザーであり、オリジナル曲でジャズの世界観を再布置化しようと企てる希有でチャレンジングなミュージシャンとして自立したからに他ならない。健吾さん自身がライブの中で語ったように、それは小曽根真との出会いの中でインスパイアされたものに違いないのである。しかし、今回のライブでは、その珠玉 の楽曲を、はじけるようにファンキーな健吾さんのベースはさらに再解釈し、おかずを加え、ゴージャスな料理として僕たち聴衆の前に提示しているのだ。中村健吾の現在は、そうした精神の葛藤やせめぎあいが新しい音楽を生成してゆく過程を、一夜のライブの中ではっきり見せてくれる。
だからこそ、僕たち聴衆はいやおうなく健吾さんに説得され、帰りの道中で健吾さんへの愛を語ってしまうのである。こんな中村健吾とその愛するミュージシャン達に出会えるのだから、僕は是非ひとりでも多くの方にライブ会場に足を運んでいただきたいと念願する。中村健吾は、今死ぬ ほどファンキーである。生真面目でファンキーなロマンチストなのである。

 再度言うが、今回のリーダー健吾さんをはじめ、カルテットのメンバーの生真面 目でひたむきなジャズへの傾倒は、今もこれからも僕たち日本人がジャズに向き合うときの基本姿勢であり、そして希望でもあると思う。彼らは、テクニックだけに生真面 目に向き合っているのではない。音楽の、ジャズのソウルに真正面からぶつかって一歩も逃げない。生真面 目に、ブルージーで、ロマンチックで、ファンキーなのである。これって最高に楽しいじゃないか!日本人の発するジャズが、真にグローバル・ラングエッジとなるために・・・。僕たちが音楽を、世界を愛するために・・・。そして、プレイヤーとオーディエンスの生真面 目な向き合いが、音楽への祈りとなるのである。僕は今夜、そのことを確信した。

 今回のジャパンツアーは、5月1日まで続く。彼らの音楽は、一日一日ますます進化し深みをましてゆくことだろう。さらに、大阪と東京では、ギターの入ったライブも聴くことができる。あまりにも贅沢な楽しみが満載である。僕は彼らから目が離せない。
 どうかみなさん、是非、中村健吾さんのライブに足を運んで、生真面目でファンキーな心優しいミュージシャン達に出会ってください。そして彼らのとてつもなくでっかい愛をもらってください。
 最後になりますが、健吾さん、メンバーのみなさん、ほんとうにありがとうございました。またボディ&ソウルでお目にかかります。最後に一言。愛してるでえ!


Program

ファーストステージ